値引きの代償について

値引きの代償について

2014年 11月号

システム開発の費用について少しでも安くしたいと考えるのは当然のことです。システム開発会社に見積を依頼すると大きく2つの分類で構成されていると思います、1つはハードウェアや仕入れる商品、サービスの費用です。もう一つは、SEやプログラマーが作業する工数に基づいた人件費のような費用です。企業は貴重な財産を支出して、システム投資を行うわけですから、費用対効果などを考慮して、投資費用を少しでも低減しようとするのは当然です。しっかり、自社からの要求が定義できているか?その要求を実現するにあたって必要なモノか、必要な作業か?などはその会社の経営者、システム担当者としてのITリテラシーや発注能力の腕の見せ所です。そして、見積もりが高いようでしたら値引き交渉を進めることになります。しかし、高いとは何をもって高いのでしょうか?。ただ「いくらだから高い」とか、「他社ならいくらだから高い。」と言う人は経営者、システム担当者としてのITリテラシーや発注能力が欠落していることを自ら証明していることになります。

多くの企業が人件費にあたる費用を下げる交渉をします。そこが一番、叩きやすいからでしょう。もちろん、人件費に過剰な管理費を見積るシステム会社もありますから、しっかり交渉した方が良いと思います。しかし、そこまで過剰管理費も乗せず、技術作業費用を見積っているにも関わらず、そこの値引きを交渉するのであれば、その覚悟と、その代償を予め背負わなければなりません。その覚悟もなく、ただ値引き交渉をして、「いくら引いて下さい。」とか「いくらしか予算がありません」等と言って交渉を成功させたとしても、実はそのことは大失敗のスタートであるということをあまりに多くの人が気づいていないのが現状です。そのため、失敗プロジェクトは今でもたくさん存在しております。

値引きの代償のメカニズムを説明します。システム開発の際は必ずプロジェクト体制が組まれます。そこには、プロジェクトマネージャー、リーダー、メンバーなどが集まり、同じゴールに向かって作業を進めていきます。そのプロジェクトの中では様々な情報が共有されます。技術的なこと、納期のこと、お客様の業務や動向、チームの成績評価のこと、など様々です。そこで、値引きの情報も共有されるのです。その値引きの対象は何か?自分達の作業費が対象であることが分かります。その結果プロジェクトメンバーは自分たちのプロとしての技術が否定されたことに気づきます。さらに成績評価やお給料に直結しますので、給料を下げられたという思いをします。または働くことができる時間自体が削減されてしまうので、十分な作業やサービスを提供することが不可能になってしまいます。

プロジェクトは同じ目的に向かって進みます。つまり企業と同じように、発注したお客様や発注者が社長の役割なのです。その会社同様のプロジェクト体制の中で社長である発注したお客様や発注者が値引きをするということは社員に対する給料を削減することと同じなのです。またはプロとして本来お客様や会社やプロジェクトのためにやりたい、やるべき作業を進めることができなくなってしまうことと同じなのです。そう考えると値引きの代償はとても大きいのです。大きな代償を伴う値引きという行動を選択せずに、自分の経営者、システム担当者としてのITリテラシーや発注能力を上げるとういう行動を選択する人が増えるのは当然の流れではないでしょうか?