システム発注者の苦悩について

システム発注者の苦悩について

2015年 3月号

どのような会社においてもITシステムの担当者は高度の知識や能力が必要とされる大変なお仕事であると思います。なぜならば経営幹部のように自社の事をよく理解していなければなりません。特にIT担当者ですから会社の情報の流れはすべて頭に入っていなければならないのです。そんななか、自社のシステムを開発するとか、Webサイトを制作するとか、社内インフラを構築するとか、大きなプロジェクトを管理しなけらばならなくなります。

システム開発では担当者はシステム会社である業者をコントロールして、自社にとって最善のシステムを作らなければなりません。ただし、システム開発は提案の段階で、内容と費用が決まります。費用は発注側も受注側も共通の認識が取りやすいものです。1万円はだれにとっても1万円であるとわかりやすいからです。しかし、問題は内容です。たとえば、「要件定義」とはなんでしょう?「運用試験」とはなんでしょう?「入荷処理機能」とはなんでしょうか?「部門別統計分析機能」とはなんでしょうか?漠然とこういうことだろうという想像はつきますが、実際に見てみないと、出来上がったものを使ってみないと、ハッキリとはわからないという人が多いはずです。

ところが、そのように内容に対する認識が曖昧な状態で、費用だけは決まって、プロジェクトがスタートすることがほとんどです。さらに、最悪に運が悪いケースは会社の予算の都合で提案通りの見積りで契約できず、費用が下がっている場合です。費用を下げたからには比例して内容も少なくしています。10本1000円の買い物をしようとしたが、300円しかもっていないので、レジで7本返して、3本だけ購入する。ということが提案、見積、交渉、発注というレジを通るときに行われてします。

しかし、システム発注の場合は製品はその時点では出来上がっておらず、目に見えないということが問題です。10本が3本に減るという実感が発注側が理解しきれないのです。そこで、システム開発が進む中で、あれが足りないとか、これは違うとかいう問題が出てきます。それは当然です、足りない、違う、と言いたくなければ10本分の予算を払うか、出来上がる前にすべて想像できるだけのスキルを身に付けておかなければなれなかったのです。10本と3本の違いがハッキリ理解できるスキルが必要なのです。みんなが現物を見なければ理解できないものを、自ら想像し、問題が起こる前に未然に解決できる人材としてシステム発注者は会社の重要な役割を果たしているのです。