「にわか知識」が起こす大きな障害について

「にわか知識」が起こす大きな障害について

2016年 8月号

ITの利用者とITの技術者では専門性が大きく異なります。プロのスポーツ選手とスポーツ愛好家、航空機のパイロットと飛行機マニア、企業経営者と自称コンサルタントなど、どの世界にもプロではないがそのことが好きで興味があり、たくさんの「にわか知識」を持った人々がいます。そのこと自体は問題ではないと思います。しかし、システム開発(ウェブサイト製作、ネットワーク構築)の仕事においてはその存在が大きなトラブルの原因になる可能性を含んでおります。皆様のお近くにもいるかも知れませんので、ご注意を頂きたいテーマです。

システム開発(ウェブサイト製作、ネットワーク構築)を外部の業者に委託する際に、「自分でもできるのだが…」等と言う人々は概ねこの「にわか知識」の持ち主です。もちろん、プロを凌ぐ程の専門知識の持ち主である一流の経営者の方や士族の方もおります。しかし、残念ながらそれは稀なケースで、その殆どが「にわか知識」を持った二流の人材です。対処方法は難しいのですが、その問題を乗り越えないとプロジェクトの成功には近づかないので多くのITエンジニアが直面する問題です。「にわか知識」は持ち主の虚栄心を膨張させ、異常値まで自尊心を高ぶらせてしまいます。このような個人的感情とシステム開発の成功という極めてチームワークとロジックを重視する仕事はかけ離れていますので、分けて考えることが良い進め方でしょう。

先ず、プロジェクトで最優先することは専門知識者であるITエンジニア達がしっかりとお客様と向き合い理解した上でプロジェクトの正しいゴールを決め、現状からの戦略(プラン、シナリオ)を策定することです。その後に、プロジェクトで色々と発言してくる「にわか知識」の持ち主の虚栄心と自尊心の保全を行います。そしてプロジェクトの関係者にこれ以上、「にわか知識」の持ち主で増えて障害が大きくならないように努力をします。殆ど役に立たない、的外れの「にわか知識」の発言を重視してはなりません。それより、虚栄心と自尊心の保全をする方がよいでしょう。

優秀なITエンジニアは一見無駄に思える「にわか知識」の持ち主が起こす問題の解決で人間としての成長にも繋がるかもしれません。しかし、「にわか知識」の障害は深刻な問題です。このような虚栄心と自尊心のために「にわか知識」の持ち主になってしまうことをいかに防いでいけるかということも、これからのITエンジニアの仕事のひとつになるのかもしれません。