見積りと価格交渉について

見積りと価格交渉について

2018年 11月号

ITに関する仕事を依頼する際にはその見積りを取ることになります。その場合、見積りを見て高い安い等の判断をして、発注を検討することになります。しかし、IT業者からの見積りとは分かりにくく、実際に顧客側は高い安い等は正確には理解・判断することは困難な場合がほとんどだと思います。

先ず、システム開発等の見積りは建設業等のいわゆる人工計算にイメージが近いです。例えば、あるシステムをいつぐらいまでに作りたいという要望に対して、打合せを重ねて工期(納期)が3ヶ月になったとします。その場合、一人50万円/月の技術者が3ヶ月ですと50万円×3ヶ月で150万円です。しかし、一人100万円/月の技術者が5人がかりで3ヶ月だとすると100万円×5人×3ヶ月で1500万円になります。つまり50万円の3人月か、100万円の15人月かというほど大きな差が生まれることになります。これは発注者側も人工計算の知識を身に付けておくと対応できます。ただし、この人工計算の見積り対してその知識が無いのに価格交渉をするため、システムの機能ごとに見積りをしてください、と依頼することもあります。きっとその上でこの機能はいる、この機能はいらないとしてコストダウンを試みるのでしょうが、これは比較的ナンセンスな交渉です。例えば料理店で「野菜炒め」を注文する際に500円では高いので「もやし」だけを抜いてその分値段を下げてください、という変なお客と同じようなイメージです。業者の人工計算にはそれなりの意味があるので、その旨は理解するとよいでしょう。

次に短時間での作業の場合です。これは医者の治療や手術に似ています。短時間の作業なのにこんなに費用が掛かるのか?と思い、高いと感じることがあるかもしれませんが、これは難しい専門的な作業を短時間でできる技術スキルがあるという証拠なのです。ですから、ちょっと作業するだけなのに高いので安くしてください、と言ってもこれもまたナンセンスな変なお客のイメージになってしまいます。(では無駄に時間をかければよいのか、という的外れな議論になってしまいます。)

とはいえ、発注する側も真剣に価格交渉しなければならないこともありますし、それ自体は大事なことです。ですから、その価格交渉のために少しでもITに関する基本的な知識やITの常識に対する理解を深めて、その土台の上でフェアに交渉をすると、お互いにとってより良い見積りになるのではないかと思います。もっと真剣にレベルの高い価格交渉をすることも今後は益々重要になってくるのではないでしょうか。